G・A作戦準備室

サークル重力天使のほめぱげ。主にダラダラとした告知とかキッチリとしたどうでも良い話。      発行する同人誌には18禁の物もありますが、ここは全年齢なのです。

Rubber Edg/1

いつの頃からか、私は言いようの無い不安に包まれて生きていた。
それは周囲で繰り広げられる、差異の無い生活に。
満足足り得ない幸福感が支配する日々の最中に。
流れていないようで確実に流れる時間の奔流で。


それはまるで真綿で首を絞められ、毎日少しづつ増やされる足枷の重りを引くように感じた。
いつしか、そうした重圧に耐え切れなくなり、そうやって人間は壊されて、本当の形を取らなくなるのではないだろうか。それは雑多で規格もまちまちな鉄屑を溶かし、打ち、拳銃の弾を量産するかのようにして行われている事のようだ。
そりゃあ、そうだ。
人を殺せるのならば、どんな経緯で作られた弾丸も同じ事だ。
事実なのだとしたら、この世界の摂理はおかしい。
と、このような事をぼんやりと考え続ける私もまた、変わらない日常を過ごすに過ぎない女学生A、なのだろう。
世の中なんて、見かた次第。誰が主役かも分からない物語の脇役を演じているに過ぎないんだと思えば、その行動にも意味が出てくるかもしれないと淡い期待を抱いている。
脚本家の思惑外の事をやれば、役割分担などと言う下らない幻想を壊せるかもしれない、そんな意図をいつしか思うに至って、生きていた。


意味も取れない周囲のざわめきの中、私は大学ノートと万年筆引っつかんで教室の外に出る。
平静を保った世界の情景、その一つにすら嫉妬を感じる。
彼等と同じく、何も考えていないかのように振舞えるのならばどれ程気楽に生きられるだろうかと。
生憎、そうした仮面を被る技術が無かった私は在るがままに生きる方法しか知らなかった。
予鈴のチャイムなど、私を縛る物ではない。
ただの耳障りな雑音だ。


元来、努力などしたいと思った事は無く、何かに打ち込む事も愚かだと思っていた私は、その分の反動なのか妙に頭の回転だけは速かった。
いや、もしくはその逆なのか、頭の回転が速い故に、努力や打ち込む事をしたくなかったのだ。
『一を知って十を知る』なんて言葉があるけれど、まさに自分の事かと辞書を見て驚愕した。
だが、天才などとは程遠い物だと悟るのも同時であった。
『天才は1%のひらめきと99%の努力』かの発明王はこう仰ったと多くの人は知っている。
だが、その真意は『1%のひらめきがなければ99%の努力は無駄である』と言うなんとも救いようの無い言葉だった。
それ故に、ひらめきなどと言う物とは無縁な私は周囲の言う天才などと言う賞賛や畏怖に疑念を抱き続けた。
私は天才でもなんでもない。ただ、小賢しいだけの子供だと。
そうして過ごすうちに分かってきた。
私は『ただの頭の回転が速いだけの人形』なのだと。
『それは精巧に作られた刀のフェイク、模造刀』なのだと。


入道雲が流れ、穏やかな風の流れる空の下。
この、少年少女には手狭ながらも無駄に広大な『銃製造工場』で私の思う唯一の安らぎの場がこの屋上にあった。
部員、たった二名の天文部。
事実上、今年で廃部の決定したこの部活にいる理由は、簡単だ。
公然の理由でこの場所が独占できるからだ。
もう一人の部員は完全にインドア派で勉学の虫、この時間にこの場所には来ない。
私は憧れていた。変わらない日々の中で、空だけは常に変わる。
風で、空気で、温度で、天候で。
そんな空の下で、思うが侭にペンを走らせる事が好きだった。
取り立てて目的があってペンを走らせる訳ではない。
ただ、空が好きで、その下で無想のように文字を連ねる事が好きだったのだ。
ある時は、どこかの授業で行っていた音楽を譜面に起こし、またある時は小説を手にして意味も無くそのまま写していた。
そして、今日は資料データを基に大東亜戦争末期のデータ検証を行っていた。場所は硫黄島。どうやったってアメリカ軍の勝ちが分かっていたとしても、あれだけの被害を出せる日本軍の戦闘力には十分な興味が持てた。
そんな折だ。不意に声を掛けられた。
どうせ、生活指導の教師だろうと思い、無視を決め込むつもりだった。
「第二次大戦の資料検証か。結構。随分と渋い趣味をお持ちだ」
そんな、まるで咎める気の無い声に、私は酷く驚嘆した。
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