G・A作戦準備室

サークル重力天使のほめぱげ。主にダラダラとした告知とかキッチリとしたどうでも良い話。      発行する同人誌には18禁の物もありますが、ここは全年齢なのです。

Rubber Edg/3

自らの名前、それを今更考える事になるとは思わなかった。
朝倉 涼二、全ては彼の発言の影響だった。
そもそも、『ショウコ』なんて言う発音は通常『祥子』とか『昌子』とか言う漢字を当てるべきではないのか?
かと言っても、その真相を名付けた本人に聞けないのならば、戸籍辺りを調べるしかないか。
そんな事を考えながらに図書室で経済新聞を読み耽っていた。
その日の株価は鉄鋼系が妙に上がっていた。


力ある風の吹く屋上。夕焼け色に染まる空の色を眺めながら、自販機で買ったコーヒーを舐める。
昼間あれだけ綺麗だった空ならば、夕焼けだって綺麗。
そんな事は確実では無いけれど、なんとなくその日は確証を持て夕焼けが綺麗だと思い込んでいた。
駆け上がる屋上までの階段が妙に楽しかった。
その日の思い込みは当たりだったようだ。
薄っすらと流れる雲。地平線の彼方に沈もうとする太陽に、オレンジと淡い紫のコントラストがとても美しく、自然の力の偉大さに感動した。
多くの人が何気なく見逃してしまうこの夕焼け色を毎日見届けるのは、最早染み付いてしまった日課だ。
けれど、その日課にコーヒーが付いてきたのは今日が初めてだ。
安物でミルクも砂糖も入っているコーヒーだけれど、こういう味の方が甘くて口当たりも良くて飲みやすく好きだ。
そう、ブラックコーヒーなんかよりも、こういう味の方が親しみやすいと思う。
口いっぱいに広がる甘味と苦味にこう言うのも悪くないと感じていた。


耳に聞こえる音だけが全てと誰が決めたのか。
雑踏の中で鳴り響く雑音だって十分な音楽だと思う。
鳴り響く車のエンジンはベースやバスに、人の群れの鳴らす靴の音は管楽器かティンパニの低音に似ている。
方向性の無い喋りがメインの旋律になる。
時刻は午後の七時。
私服の学校だからこそ、こんな時間に夜の街を歩けるのだと分かっている。国内の治安を守る法律や条令は年々厳しくなる一方で、この時代では遂に学生の八時以降の外出に規制が掛かるまでになっていた。
一昔前ではとても信じられない話だが、事実として夜の街を歩く人々の群れの中に学生服を着た人間は数える程しか見られない。
私服の学校もそうした時代の流れの中では減りつつあり、私の学校はそうした理由からか、いつしか競争率が異常に高い進学校と同じレベルになりつつあった。
ほんの五年前までは自由な校風、気取らない普通の学校であったはずだが今のこの学校は進学校と変わらない授業内容に変化しつつあった。
私達の思惑の外で、大人たちの理屈だけで、私達を取り巻くものが変わってしまう。
けれど、そうした事に何の干渉も出来ず、ただ今の現状を受け入れるだけが精一杯で。
たしかな変化を感じる間も無く、唐突に日常が、世界が変わって行く。
何が出来るのか。何か出来ないのか。
思った以上に手狭な『世界』が変わっていく事に、ただひたすらに鬱屈とした感情を押さえ込んで生きる事しかできなかった。
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